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【ゼミ生研究報告】女性管理職のストレスとワークエンゲージメント:職場風土と女王蜂症候群との関連性

小山ゼミ 2022年度3年グループB(秋山賢人、大石景介、下笹瑞季、成瀬万梨愛、吉原弘貴)

 

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本稿はゼミ論文の概要を簡潔にまとめた「サマリー」である。

1.問題意識

 各国における男女格差を数値化したジェンダーギャップ指数において、特に日本は低く、国際社会に比べて非常に後れを取っているという現状があります。異文化マネジメントの観点からも、インクルーシブな組織を築くことは生産性を向上させるとされています。そのために、現在日本組織においてマイノリティである女性管理職にとって働きやすい職場にすることがインクルーシブな組織を構築するきっかけになるのではないでしょうか。そうした問題意識から、本研究では女性管理職に着目し、男性優位な職場風土、女性管理職のストレス、女性管理職の陥りやすい女王蜂症候群、ワークエンゲージメントについて、それぞれの相関関係を分析しました。なお、女王蜂症候群とは、女性リーダーが後輩の女性から距離を置き、組織のジェンダー不公平を正当化することによって、男性支配的組織に同化する現象のことを言います。

2.仮説

 本研究では、男性優位な職場風土、女性管理職のストレス、女性管理職の陥りやすい女王蜂症候群、ワークエンゲージメントについて相関関係を分析するために、以下4つの仮説を設定しました。

 

  • 仮説1: 男性優位な職場風土と女性管理職のストレスは正の相関である
  • 仮説2: 女王蜂症候群と女性管理職のストレスは負の相関である
  • 仮説3: 男性優位な職場風土と女性管理職のワークエンゲージメントは負の相関である
  • 仮説4: 女王蜂症候群と女性管理職のワークエンゲージメントは正の相関である

3.調査計画

 調査方法は、Googleフォームによって作成したアンケートに、WEBリサーチ会社のモニター会員から回答してもらいました。調査対象者は(1)女性、(2)会社員、(3)管理職、という3つの条件に当てはまる人としました。107人から回答を頂き、有効回答数は92人でした。

4.結果

 仮説検証のために相関分析を実施したところ、結果は以下の通りとなりました。

 

 仮説1「男性優位な職場風土と女性管理職のストレスは正の相関である」は支持されました。

 仮説2「女王蜂症候群と女性管理職のストレスは負の相関である」は支持されませんでした。

 仮説3「男性優位な職場風土と女性管理職のワークエンゲージメントは負の相関である」は支持されませんでした。
 仮説4「女王蜂症候群と女性管理職のワークエンゲージメントは正の相関である」は支持されませんでした。

5.考察

 今回の分析では、仮説1において男性優位な職場風土と女性管理職のストレスの相関関係が認められました。このことより、男性優位な組織風土の組織にいる女性管理職のストレスは高く、組織に順応するために女王蜂症候群になったとしても、女性管理職自身のストレス低減になるわけではないということが言えます。男性優位な職場風土における女性管理職は、先行研究にあるように、組織における少数派、数的不均衡といった影響から、男性による「内集団ひいき(男性社員ひいき)」を受けているのではないかと推測できます。

 一方で、仮説2において女王蜂症候群と女性管理職の相関関係は認められないという結果になりました。この結果は、先行研究の想定とは異なるものです。したがって、女性管理職のストレスを低減させるためには、女性管理職の価値観や考え方を男性管理職のように変えさせるのではなく、「男性優位な職場風土」を「(性別に関係なく)個性重視の職場風土」に変えることが必要であると考えられます。

 今後の研究では、「個性重視の職場と女性管理職のストレスの関連性」について研究する必要があると私たちは考えています。