小山ゼミ 2025年度3年チームA(中澤奈々、大澤元希、橋場あろえ、山中拓弥、加藤理子、内野珠耶、小巻花菜子、堀切美空)
第15回 国際ビジネス研究インターカレッジ大会(IBインカレ2025) 審査委員会特別賞「大石芳裕賞」受賞
(IBインカレについてはこちら)(東京経済大学ニュースはこちら)
2025年度TKU進一層賞 ゼミ学外活動部門「父母の会会長賞 優秀個人賞」受賞
本稿は、論文(英語)の概要を簡潔にまとめた「サマリー」です。
Abstract
Global career research has revealed that a high density of international experiences is one of the crucial antecedents of global work involvement. Nevertheless, some individuals engage in global work involvement after having only limited international experiences. This study focuses on Japanese professionals who have reached global work involvement without long‑term international experiences to examine their developmental processes qualitatively. Based on our interview survey, we developed a theoretical model that explains the process from low density of international experiences to global work involvement. Our model shows that motivational and behavioral processes, including short-term international experiences, interact repeatedly and reinforce one another, ultimately leading to global work involvement. As past research focused only on high density of international experiences, this study advances global career research by demonstrating that global work involvement can also emerge from low density of international experiences.
1.問題意識
グローバルビジネスが進展する現代において、国際的に活躍できる人材の成長プロセスを明らかにることは、研究と実務の両面で重要性を増しています。これまでの研究では、留学や海外生活といった「高密度の国際経験」によって文化的知能(CQ)や多文化的視点が養われ、それがグローバル人材としての成長につながることが明らかにされてきました。しかし、実際には長期の海外滞在経験がなくても、グローバルな仕事に関与している人々が存在します。
そこで、本研究では、「低密度の国際経験」がどのようなプロセスを経てグローバルな仕事への関与につながるのかを明らかにすることを目的としました。とくに日本では、地理的・言語的・文化的な要因から長期の海外生活に対する障壁が高く、多くの日本の若者は「高密度の国際経験」を持たないまま社会に出ます。本研究で調査対象としたのは、就職するまで長期の海外経験がなかったにもかかわらず、海外駐在を経験した日本人です。
2.リサーチクエスチョン
「低密度の国際経験」からどのようなプロセスを経て「グローバルな仕事への意欲や関与」(Global work aspiration/involvement)に至るのか。
先行研究では、国際経験がグローバルな仕事に寄与するためには、文化的知能(CQ)の発達や、グローバルなアイデンティティの形成が必要であることが示されています。しかし、これらは「高密度の国際経験」(外国での長期滞在)を前提としたモデルであり、「低密度の国際経験」しか持たない場合にどのような心理・行動プロセスが働くのかは十分に解明されていません 。そこで本研究では、「低密度の国際経験」から「グローバルな仕事への意欲や関与」に至るプロセスを明らかにすることにしました 。
3.調査計画
長期の海外経験を持たずに日本国内でキャリアを形成して、現在は海外駐在などグローバルな仕事に関与している日本人4人にインタビュー調査を実施しました 。インタビューは許可を得て録音し、逐語録を作成しました 。逐語録から137のナラティブ・セグメントを抽出して、最終的に "Interconnected-and-Iterative Mechanism"という理論モデルを構築しました 。
4.結果
インタビュー調査の結果、「低密度の国際経験」から「グローバルな仕事への意欲や関与」に至るためには、"Interconnected-and-Iterative Mechanism"が機能していることが明らかになりました。このメカニズムは、自己効力感(Self-efficacy for international experiences)、内発的動機づけ(Intrinsic motivation for international experience)、短期の国際経験(Short international experiences)、そして英語学習(English learning)という4要素から構成されます。これら4要素のうち、自己効力感と内発的動機付けは「動機づけ信念」(motivational beliefs)、短期の国際経験と英語学習は「行動」(behaviors)に分類されます。"Interconnected-and-Iterative Mechanism"の特徴は、動機づけ信念と行動とが相互に強化し合う反復的なプロセスである点にあります。
5.考察
本研究の理論的貢献は、「高密度の国際経験」がグローバルなキャリア発達の前提条件であるという従来の定説を再考し、「低密度の国際経験」からでも「グローバルな仕事への意欲や関与」が実現することを明らかにした点にあります。その主な要因は、動機づけ信念と行動が相互に強化し合う反復的なメカニズムの存在です。このことは、国際経験を単に「長さ」や「量」で捉えてきた先行研究では見過ごされてきた点です。
本研究の実践的含意としては、グローバルに働くことを志す個人にとって、必ずしも長期留学や海外駐在の経験が必須ではないということです。短期の国際経験や日々の学習を通じて自己効力感と内発的動機を含む動機づけ信念(motivational beliefs)と英語学習や短期の国際経験を含む行動(behaviors)のメカニズムを意図的に回し続けることでも、グローバル人材として成長することが可能です。企業や教育機関においても、長期プログラムへの依存だけでなく、このような反復的なサイクルを促す機会を設計することが求められます。
本研究の限界として、調査対象者の少数であること、調査対象者の全員が日本人男性であることが挙げられます。今後の研究では、サンプル数を増やすとともに、異なる文化的・社会的背景を持つ人々にも調査をして、本研究で構築した理論モデルの適用可能性を検証する必要があります。そうすることで、より詳細で一般化可能な分析ができると考えています。

